台所からキッチンへ

戦前まで、日本の住宅では、台所は中廊下の北側に位置していることが多くありました。
それは、台所が作業場である要素が強かったことに加え、食材が腐らないようにするための工夫であると考えられます。

戦後の住宅不足の解決策として、昭和30年頃に住宅公団が誕生します。
住宅公団の間取りは、食事と寝る場所を別にする「食寝分離型」。
食事の場所を専用に作りたい、ということで生まれたのがダイニングキッチン(台所兼食事室)。
テーブル式のダイニングキッチンはモダンな生活の象徴でしたが、実際は調理のスペースと食事のスペースを兼用とし、住宅の面積を節約するための苦肉の策でもありました。
そして、ステンレス製流し台の普及は、ダイニングキッチンに取り付けられたことから始まります。
ステンレス製流し台の普及とともに電気冷蔵庫や電気炊飯器などの家電製品も家庭に浸透するようになり、家事労働の省力化や時間の短縮をもたらしました。
昭和40年代後半にはシステムキッチンが登場しました。
それから、誰もが衛生的、効率的、そして快適に料理ができるシステムキッチンへと今も進化し続けています。
家の北側の暗い場所にあった台所は時代を経て、キッチンへと大きな変貌を遂げました。

どんどん便利になる現在のキッチン。
今では、掃除が楽なフラットトップのコンロ、水はけがよいシンク、センサーで水を出したり止めたりできる水栓、出し入れしやすい収納など、誰にとっても便利な機能が進化しています。
またイギリスでお料理ロボットも開発され話題になりました。
これからもキッチンが、どのようにその時代に合った変化をしていくか楽しみです。