住まいの湿気と健康

調湿の必要性を考える

住まいには必然的に湿気が発生します。

例えば、人の体温は、食事という行為や酸素の摂取によって産出された熱エネルギーが体外へ放熱されることによって一定に保たれています。
その放熱の内訳は約70%程度が輻射・伝導・対流で、残りの30%程度が発汗を主とした水分蒸発。
ところが、機械空調によって高温高湿や低温低湿になると、水分蒸発量が著しく変化し、人体の体温調節機能に影響が表れてしまうのです。

発汗作用は体温調節にとどまらず、その他の代謝にも密接に関係し、生理的な機能にも大きな影響を与えています。
従って「調湿」(湿度を調整する機能)は発汗を適度に促すため、また健康を保つという意味でも必要となり、居住者の健康を司るバロメーターとして室内環境には欠かせない要素といえます。

また、結露を防ぐうえでも重要です。
「湿気」について結露は、壁内や床下などの隠れた空間での湿気の移動によって生じ、カビの発生などにより木材を腐朽させます。
1980年、北海道で新築3年目の住宅の床下にナミダダケというキノコが発生し、床が腐り落ちたという事件が起こりました。
これはテレビで報道され湿度と断熱との関係がクローズアップされた実例でもあります。

調湿はモノの寿命にも影響します。
特に湿度の変動幅が大きいと損傷が激しく、例えば、美術館や博物館の収蔵庫などは恒湿が基本とされ、内部湿度を一定に保つことがなされています。
またもう一つの方法として外気温に収蔵庫内の温度を追随させる場合などがあります。

後者の考え方は、自然の環境下を空調管理化したものでわが国の伝統的な蔵などが近い状況といえます。
一般に収蔵庫などでは、内装材は木材を用い調湿機能を利用して恒湿に保つという方法がとられています。